宅配クレーム上位4つと遅配が起きるメカニズム

クレーム・誤配・誤送・遅配……消費者と配送会社の間で何か問題が起きれば、荷主の印象はがた落ちです。
大事なことは、運送会社の責任者と密にコミュニケーションを取る環境を構築し、自社主導で品質管理を行っていくことです。
その前提として知っておきたい配送トラブルが起きる経緯について説明していきます。

目次

1.匂いによるクレーム

“臭い”も要注意、よく起きてしまうクレーム

受け取ったダンボールがタバコ臭いというクレームは、割と高い頻度で発生しています。
そのため各宅配事業者はタバコクレームを誤配と同じくらい「悪」とみなしています。

宅配業者によっては運転中の喫煙禁止指示を出したり、喫煙後は「うがい」「手洗い」の実施と消臭スプレーを施すことを義務付けていることも多いのです。

軽貨物運送アシストラインでもタバコクレームが残念ながら発生します。

その都度ドライバーと面談し、普段の喫煙状態や防止策に関して話し合いを行い、ドライバーが納得してくれれば引き続き業務を続けてもらいます。

しかし納得できないドライバーさんには、その業務を離れてもらいます。

”配送クレームを起こさないためにも、配送ミスを事前に予防するか、即時再発防止策を講じることが重要です”

2.宅配ドライバーの判断による遅延クレーム

宅配ドライバーは当日に配送量を把握し、自分で最短・最速のルートを練っています。

基本的に宅配ドライバーは自分の受け持ちエリアが決まっており、よほど特殊な場合を除き、“誰かが助けてくれる”ことはありません。

なぜなら助けてくれる「誰か」も自分の受け持ちエリアがあり、それぞれ定められたルールに従って荷物を配達しているからです。

簡単に言うと隣の人に構っている余裕がないのが通常なのです。

さらに、この情報社会で暮らしている皆さんにはちょっと信じられないことかもしれませんが、各ドライバーは、「今日配達する荷物がどれだけの件数があるのか」「それぞれをどこに配達するのか」といったことを、その日の朝に出勤して初めて知ります。

つまり、その日偶然、自分のエリアに到着した荷物の件数が多い場合、また同じ時間帯に配達しなければならない荷物が重なってしまった場合、ドライバーがどういう優先順位を付けながら配達するか決断を迫られます。

また、工事や事故などによる突発的な交通事情の悪化、時期的な物量の増減、再配達の依頼など、日々条件が変わっていくので、皆さんが考えているように毎日決まったルートを、決まった順番で訪問できるわけではないのです。

このように、日々変動する状況のなか、配達を担うドライバーたちは、瞬時に最短ルートを判断し、同時に渋滞状況などを予測しながら、各所への到着時刻を予想しておかねばならないのです。

ある種職人技のようなものであり、習得するにはそれなりの経験を積まねばなりません。

たとえば、ベテランのドライバーでも新しいエリアを受け持って間もないときは、その能力を発揮することができないものです。

そういった状況下で、配達順を組み間違えてしまったり、見込みが甘かったりすると、予定通りに配達が進まず、遅配を起こしてしまうことになるのです。

3.空目によるクレーム

誤配の原因の大半が「空目」です。配送ドライバーって、そこに存在していないものを見たと認識してしまうことがあるんです。

荷物に貼る送り状の届け先を記入する枠は、縦4cm×横7cm程度しかありません。
商品を発送するためにそこへ20~50くらいの文字が書き込まれているわけです。
現場のドライバーや仕分けスタッフはそれを何十個、人によっては何百個も瞬時に読み取り、判別しなければならないのが宅配業務の仕事です。

機械化が進んでいるものの、まだまだ「人」による仕分け作業が多いのが事実。
日本には紛らわしい地名がたくさんあり、それが原因で「誤配」が起きるケースが多いんです。
また、購入者が配送先住所の記入をミスしてしまうといったケースも往々にしてあるんです。

例えば、

・中央区(東京都・大阪市・札幌市・福岡市・相模原市・神戸市・他)
・中野区(東京都) と 中野市(長野県)
・大田区(東京都) と 大田市(島根県) と 太田市(群馬県)
・松山市(愛媛県) と 松本市(長野県) と 松江市(島根県)
・玉野市(岡山県) と 玉名市(熊本県)
・綾瀬市(神奈川県) と 綾部市(京都府)
・亀山市(三重県) と 亀岡市(京都府)……etc

ぱっと見て判別しづらい名前が多いです。これが町名ともなるともっとわかりづらい。

もし、自社で発送している荷物で「遅配」「誤配」が多いなと感じているのであれば、
「送り状」をよーーーく眺めてみましょう。

印字されている(書かれている)文字が小さかったり、変なところで改行されていたりしていませんか?
ひょっとするとそれがドライバーの「空目」の原因になっているかもしれません。
また、ドライバーの思い込みも多い原因になってます。

4.破損・汚損によるクレーム

商品を集荷し、送り先の営業所までに送るまでにはさまざまな行程があります。

大型のトラックがよく使用されますが、そのなかは“通勤ラッシュ時の満員電車”のようなもの。最近ではエコやコスト削減の観点から、一部で簡易梱包が流行っているようですが、
簡易梱包で荷物を送るというのは、「満員電車にパンツ一丁で乗るようなもの」なのです。

要するに、商品の破損を防ぐ方法はしっかり梱包をすること以外にないということ。
宅配便が安く荷物を運べるのは「混載」をしているから。「混載」とは自分の荷物がまったく知らない会社の荷物と一緒に積み込まれて運ばれることです。

たとえば簡易梱包での配送は無謀な行為です。やめた方が身のためです。だって、あのアマゾンさんでさえ、厳重に梱包するのですから。

なぜ“通勤ラッシュ時の満員電車”のようなことが起き、破損事故が起きてしまうのか。そのメカニズムを説明しましょう。

クロネコヤマトのホームページによると、東京~大阪まで120サイズ(みかん箱程度)の荷物を送ると運賃は1512円(税込)になります。

しかし、同じ東京~大阪間を誰かがタクシーに乗って、この荷物を届けに行くと、20万円以上の運賃を請求されます。

なぜ同じ距離を移動させるのに130倍もの料金の差が発生するのか考えたことはありますか?

宅配便の料金が安い理由は、大量の荷物を集約して運ぶからです。

たとえば、夜間高速道路をビュンビュン走っている大型トラック。この荷台の箱のサイズは(車種によって差はありますが)長さ9.5m×幅2.4m×高さ2.5mといったところが標準です。

このサイズの荷台のなに、さっきの120サイズの荷物が単純計算で1000個ほど入ります。

では、大型トラック一台のチャーター料金が、タクシーと同じ東京~大阪まで20万円の運賃だったとするならば(本当はもうちょっと違う料金なんですけど)、これまた単純計算で1個あたり200円となります。もちろん宅配貨物はそんなに単純な動きをするわけではありません。

宅配会社のセンターで夜間に仕分けをし、何度も積み替えをして、配達をするドライバーの手元まで渡ってから、消費者のもとに届けられます。そういったコストも加算されての東京~大阪は1512円となるわけなんです。

この低価格が実現されているのは、トラックの荷台いっぱいに隙間なく荷物が積まれていることが前提となります。

もし半分の1.25mの高さにしか荷物が積まれてなかったら、1個あたりの運賃が200円→400円になるわけですから。

1000個の荷物を最も効率よく運ぶためには、トラックの荷台の箱のなかに長さ9.5mで幅2.4m、そして高さ2.5mの荷物の立方体を作り上げなければならないということなんです。

そしてその巨大な立方体を最高時速80kmのスピードで移動させなければなりません。
外側は箱で囲われているとはいえ、荷物は“ジェンガ”のように積み上げられ、その1つひとつに時速80kmの慣性の法則が働くので、最悪の場合2.5mの高さから荷物が落下することも十分あり得ることなのです。

昔は、荷物を放り投げたりしている業者も多くあったようですが、現在は現場教育が行き届き荷物を乱雑に扱う業者は、ほとんどいてません。

多くの場合は、荷崩れ、や落下、梱包不良などが破損の原因になっています。

荷主企業にとって、配送は自社の手が届かないところです。クレームを引き起こさせないためにできることは、宅配会社の営業所と密にコミュニケーションを交わし、自社主導で品質管理を行っていくことなのです。

自社の配送業務を改善について

自社の配送業務を改善するには、宅配の仕組みの理解とデータ保存が重要です。

宅配会社は日本全国で1日に数百万個の荷物を集荷し、方面別に集約をします。

全体の配送効率を高めることにより、1個あたりの運賃を抑えることに成功しているのです。

しかし、それはあくまでも人力で行う作業を集約しているだけで、オートメーションにより商品がどんどん生産されるような仕組みとは異なります。つまり、効率化に限界があり、その限界値を超えたときに必要となるのは結局、マンパワーなのです。

昨今、人口減少や労働基準法の改正による賃金の低下傾向で、若者のブルーカラー職種離れが起き、宅配各社が必要としているマンパワーの確保が難しい時代となっています。

しかし、宅配貨物がタイムリーに消費者などの手元に配送されるためには、「集荷 → センター集約 → 方面別幹線輸送 → センターばらし → 配達」という、日本全国規模の24時間365日のルーチンワークが遅滞なく進行していく必要があります。

そのため、どこかの現場で人員不足が生じることで、配送に遅延が生じることになります。

では、こうした状況下で、出荷人である事業者さんは、宅配会社とどのような交渉をすることが可能なのでしょうか?

頭に入れていただきたい重要点は、「結果論でモノを言う」ということです。どんな交渉でも同じです、“だろう”“かもしれない”といった仮説では交渉はできません。「遅配(や誤配)が多いような気がするので改善してください!」と指摘しても、宅配会社側には響かないのです。

つまり、「いつ」「どこで」「どんなクレームが」「何回発生した」のか記録を取りましょう。可能であれば、先月または前年に対してクレーム率(破損率・誤配率)が何%増えたのか? 減ったのか? このデータを前にして、交渉することが望ましいのです。

多くの事業者さんは、商品クレームのデータを残し、可視化しているはずです。不良品やオーダーミスなどのクレームと併せて、配送クレームが何回発生したか数値を取っているでしょう。数値を残す際、「いつ」「どこで」といったフラグを増やし、データとして残します。こうした作業を行うことで、宅配会社に対し効果的に改善を促すことができるのです。

改善策の要求先について

ドライバーに直接改善要求するよりも、営業所の責任者に申し入れた方が早く解決します。

事業者にとって宅配便は必要不可欠なインフラです。換言すると、「遠隔で管理している実店舗」のようなものです。もし貴方が遠隔で管理している実店舗を持っているとして、その店舗でクレームが続けて発生したとします。おそらく店長またはマネージャーを呼び付け、クレームの原因を特定し、改善策を提案させ、それが確実に実行されているか確認することでしょう。

このことは宅配事業者にも同じことが言えます。集配に来るドライバーは、実店舗でたとえるならアルバイトのレジ係に過ぎません。彼らに直接文句を言っても「すみませんでしたー!」と謝ってくれますが、根本的な原因の特定には至りません。肝心な改善策が出てこないことでしょう。

原因を特定し、改善策を提案してもらうには、責任者と良好な関係を築くことが重要です。

ここで、御社の宅配便について以下の項目をチェックしてみてください。

いつも集配に来る宅配会社はどこの会社ですか?
集配の担当者はなんという名前の人ですか?
そのドライバーはどこの営業所の所属ですか?
その営業所の所在地はどこですか?
その営業所の責任者はなんという名前の人ですか?

おそらく、3. 以降の項目について回答できた人は少なかったのではないでしょうか?

普段から仲良くしている人には、特別な扱いをしてあげたくなるものです。もちろんドライバーも人間ですから、普段から仲良くしてくれている出荷人さんには、特別な扱いをしてあげようと思うわけですが、ドライバー個人ができることは限られます。
「最終でもう一回集荷に来て!」といったお願いは快く聞いてくれるかもしれませんが、「○○県の配達が遅いので何とかして!」「最近破損が増えているので改善して!」といった要望には、ドライバーが個人レベルで対応できません。

そうなったときに、営業所の責任者への申し入れが必要となるのですが、初対面の人がいきなり訪問(もしくは電話)して、「最近ウチから発送した荷物の配達が遅いようなんだが、どうなっているんだ?!」と指摘すると、どうでしょう? 残念ながら、クレーマーだと思われて、その瞬間から心を閉ざされてしまいかねませんよね。

日々のコミュニケーションが重要

責任者と円滑な交渉に臨むには「普段のコミュニケーション」「データ」が重要です。

そこで重要となるのが、営業所の責任者との「普段からのコミュニケーション」と「品質が悪化していることを示すデータ」なのです。

まずは普段利用している宅配会社の担当営業所を訪問し、営業所の責任者と名刺交換するところから始めましょう。その時の殺し文句はコレです。

私は現在○○をインターネットで販売している事業者で、現在御社に毎月△△個くらいの発送をお願いしているのですが、今年は新商品の発売を計画していて、これが軌道に乗ると商品の発送は今の2倍……いや、5倍以上になるかもしれません。そうなったときに、より効率的な発送の方法など、どのように対処すればいいか相談させていただきたく、訪問させてもらいました。

この言葉を受け取った責任者がきちんとした知識と経験を持っているまともな人物であるならば、「ありがとうございます。それであれば、送り状の発行機、通販システムと連携できる送り状発行システムの導入、商品の破損を防ぐための梱包資材……などのご提案ができますがいかがでしょう?」といった回答が返ってくることでしょう。

その提案を受け入れるかどうかはひとまず置いておいて、提案をもらって帰りましょう。本当に出荷量が5倍になったら考えればいいことですから。

そして、次に訪問するときが本題です。2回目の訪問時には、品質悪化を示す資料(サイズ別、方面別クレーム率や破損率、誤配率の月別推移表など)を持参し、「実はこの表が示す通り、ここ数か月、○○県で◇◇のクレームが増加しているのです。この原因を調査していただきたいのですが」というように話を持っていきましょう。

その営業所の責任者も下手な対応ができなくなってしまうので、おそらくクレーム発生の要因がどこにあるのかを調査してくれるはずです。

宅配会社を仕入先やシステム会社などと同等なレベルで、密なコミュニケーションを取っておくことが重要なのです。日々状況は変化し、繁忙期(お中元・お歳暮シーズン)には配達状況が悪化します。

冬場には雪の影響で遠距離の配達に遅延が発生することもしばしば起こります。大規模なお祭りやイベントなどがある日には、その地区一帯で通行規制が敷かれることもあります。

そういった特殊事情を宅配事業者は事前に知っていますし、ひょっとすると同業他社の出荷情報なども知っているかもしれません。

いろんな情報を貴社にアウトプットしてくれることもあり得ることです。
現在利用している宅配会社と、もう一歩踏み込んだ付き合い方をしていく事をおススメします。

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